ホルムアルデヒド情報
木質材料から放散されるホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物(VOC)
木質材料から放散されるホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物(VOC)について
《木材会館(名古屋)大会議室》
背景と問題点
~ 木材・木製品がホルムアルデヒドの元凶なのか? ~
最近の住環境は、冷暖房の普及、集合住宅(マンション)の増加などがあいまって気密性の高い住居が多くなってきました。これに伴い室内の換気が必要ですが、一般に換気には十分注意がいきわたらない傾向にあります。
そこで、室内の空気環境の悪化、他の要因によるアレルギー体質の人たちの増加などから、住宅の建築資材から放散される揮発性物質に関心が高まってきました。
特に木材・木製品から放散されるホルムアルデヒドがクローズアップされるケースが多いようです。
《大和の家(香久山展示場)》
室内の揮発性物質
~ 室内には揮発性物質を放出するものが、いろいろある ~
しかしながら、住居の室内には建築、内装に使われる木材、木製品のほか、壁材、家具、家電、衣類、その他多様な調度品等があり、それぞれの製造上の原料、加工・塗装・仕上げ等の工程で使われる資材から揮発性の物質を放出する可能性を持っています。
したがって、室内の空気環境悪化に係わる原因については、よく調べて対応する必要があります。
《ヒノキ》
木材・木製品の放散する揮発性物質
~ 木材は揮発性物質を本来持っている ~
木材は天然の素材ですが、その中には本来、樹木として生育する上で必要なごく少量のホルムアルデヒドをはじめとする多様な揮発性の物質が含まれています。
こうした揮発性物質には、森林浴で有名になったフィトンチッドなどの鎮静作用を持つものも含まれ、自然の素材である木材の持つ特徴の一つとなっています。
これら木材特有の揮発性物質は特異な例を除き、人間の生理に悪影響を与えるような量を発散することはありません。
むしろ、様々なリラクゼーション効果が確認されています。
《低ホルムアルデヒド構造用合板の表示例》
F☆☆☆☆★★★
健康に害を及ぼさない木材加工品はどこで見分けるのか
~ 適切に処理された木材加工品とはどんなもの? ~
木材・木材加工品の規格は日本農林規格で定められています。この規格の中にホルムアルデヒドの放散量の基準が定められ、この基準に適合した製品にはその旨の表示がなされています。
【低ホルムアルデヒド木質材料の表示例】
- 合板、フローリング、単板積層材(LVL)、構造用パネル(OSB)
F☆☆☆☆、F☆☆☆、F☆☆、F☆ - 集成材
F☆☆☆☆、F☆☆☆、F☆☆、F☆S - 直交集成板
F☆☆☆☆、F☆☆☆
ホルムアルデヒド以外の揮発性物質(トルエン、キシレン等)について
ホルムアルデヒド以外の揮発性物質については、厚生労働省が示した基準をクリアする木材・木材加工品の性能基準の検討が進められております。
当検査会においても、木材・木製品から放散されるトルエン、キシレン等の揮発性物質の測定を大学等と共同して実施し、基礎的データ等の蓄積に努めております。
※厚生労働省の示した揮発性物質の濃度基準については厚生労働省のホームページをご参照ください。
住宅等の居室内のホルムアルデヒド放散規制について
国土交通省は、平成14年1月の社会資本整備審議会建築分科会報告(下記の概要参照)をうけて、住宅等の居室におけるホルムアルデヒド放散量を規制するため、建築基準法の一部を改正する作業に着手しました。
その結果、平成14年7月、建築基準法の一部改正案が国会で承認され、平成15年7月1日に改正建築基準法が施行されました。
この改正建築基準法では、住宅等の居室内のホルムアルデヒド放散量を規制するため、居室内の内装及び天井裏に用いる建築材料についてはそのホルムアルデヒド放散量の程度に応じて使用が規制されることとなりました。
規制の内容については、概要を「ホルムアルデヒド放散量規制と木質建材の使用条件等について」のページを参照してください。
※規制の細部については国土交通省のホームページのシックハウス関連ページに全て掲載されております。ご参照ください。
住宅等の室内空気環境評価について
住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)の制定により住宅性能表示制度が平成12年10月から本格的に運用開始されました。
同制度においては「日本住宅性能表示基準」及び「評価方法基準」がそれぞれ告示され、これらに基づき評価が行われています。
現行では室内環境についてホルムアルデヒドについて規定が設けられており、使用される建材等のホルムアルデヒド放散量の基準値に基づいて評価(4段階)が行われています。
さらに、国土交通省では、住宅等建物内のホルムアルデヒド以外の揮発性物質(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン)による健康被害を防ぐため、室内の揮発性物質の濃度の基準、測定方法等の検討が進められています。
※これらの詳細については国土交通省のホームページをご参照ください。
社会資本整備審議会建築分科会報告(平成14年1月30日)
平成14年1月30日、社会資本整備審議会建築分科会は「21世紀における新たな課題に対応するための建築行政のあり方に関する第一次報告」を審議会会長に提出した。
同報告では
- 都市再生に対応した建築基準法集団規定のあり方
- 化学物質による室内空気汚染問題に関する対策
- 建築物におけるバリアフリー対応の推進
- 住宅・建築物の省エネルギー対策
についてそれぞれに基本認識、見直しの方向、講ずべき具体的施策が示されている。
このうち、IIの化学物質による室内空気汚染問題に関する対策においてホルムアルデヒドを放散する可能性のある建築資材、家具、建具その他の規制の方法について基本的考え方が示された。その要点は以下のとおり。
- 規制の根拠となる指標について
衛生上支障のある室内空気汚染の指標としては、厚生労働省の指針値を採用する。
- 規制の方式について
規制の基準としては、室内空気汚染の原因となる化学物質の室内濃度そのものではなく、当該化学物質の室内濃度を厚生労働省の指針値以下に抑制するために通常必要な建築材料、換気設備等に関する客観的な構造基準を定める。
- 規制対象とすべき化学物質について
規制対象とすべき化学物質は、当面、ホルムアルデヒド及びクロルピリホスとする。
トルエン、キシレンその他の化学物質については、さらに調査研究を進め、規制対象への追加を検討する。 - 規制対象とすべき建築物の部分について
室内空気汚染を防止すべき空間は、原則として、全ての建築物の居室とする。
化学物質の発生源として規制すべき建築物の部分は居室の周囲の部分のうち、化学物質の種類ごとに室内空気を汚染するおそれの大きいものとして定める部分とする。
・ホルムアルデヒド
居室の周囲の部分のうち、居室を面的に被覆している主要な部分(たとえば、内装材、押入、建具等)・クロルピリホス
居室の周囲の部分のうち、壁、柱等の構造体、廊下、床下、天井裏、小屋裏等を含む広範な部分 - 規制に当たって想定すべき条件について
規制に当たって想定すべき条件としての濃度測定の平均期間は、次のとおりとする。
・ホルムアルデヒド 30分平均濃度
・その他の物質 1日平均濃度
気象条件としては、外気温、相対湿度及び風速について、夏期の条件を想定する。
通常の使用常態としては、次の状態を想定する。・窓その他の開口部は、換気等のため短時間開放することもあるが、一日のうち長時間にわたって閉鎖状態が継続する時間帯があるものとする。
・換気設備は、常時作動する構造のもの等について、作動しているものとする。
・冷房設備は、夏期に在室者のある居室について作動しているものとする。
・家具等は用途に応じ標準的な量が設置されているものとする。
- ホルムアルデヒドに関する建築材料及び換気設備の規制について
規制対象部分にホルムアルデヒドを発散するおそれのある建築材料を用いようとする場合においては、居室ごとに、次の区分のトレード・オフ関係を考慮して、ホルムアルデヒドの発散量に関する等級区分のない建築材料の使用禁止と、等級区分された建築材料の使用面積制限を行う。
・気密性による建築物の構造の区分
・換気量による換気設備の区分
・建築材料からのホルムアルデヒドの発散量による等級区分等規制対象部分にホルムアルデヒドを発生するおそれのある建築材料を使用しない場合であっても、原則として、換気設備を設けるものとする。
- クロルピリホスに関する建築材料の規制について
規制対象部分には、クロルピリホスを発散するおそれのある建築材料を使用してはならない。
※報告書の本文については国土交通省のホーム・ページに掲載されています。
この報告に示された方針に基づき建築基準法が改正されました。
以下に参考として各要点についての考え方を要約しております。※厚生労働省の指針値については、厚生労働省のホームページに掲載されています。
- 報告では、「国民の健康を保護するための建築物の最低基準を定める」ため、「健康への有害な影響がないかどうかの観点から設定されている厚生労働省の指針値を、衛生上支障のある室内空気汚染の指標として採用することが合理的である。」としてる。
- 「室内空気汚染防止のための規制の基準としては、特異な気象条件を除外し、かつ、通常の使用常態を想定した上で、化学物質の室内濃度を厚生労働省の指針値以下に抑制するために必要な各部位に用いる建築材料、換気設備等に関する客観的な構造上の基準を定める。」
- クロルピリホスは使用禁止(参照)ホルムアルデヒドは規制対象とする。
- 「トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン及びテトラデカンについては、さらに調査研究を進め、規制対象への追加を検討する。」
- 建築基準法上の居室とは、住宅、学校等の特定の用途に限らず、建築物の利用者が継続的に居住、執務、作業等を行う室の全てを含む。
- 現場で施工する接着剤、塗料等についても、塗布等のされた建築材料として、規制の対象部分に含まれる。
- ホルムアルデヒドについては短期間の暴露によって起こる毒性を指標として指針値が設定されており、30分平均濃度が指針値を超過する状態が継続すれば、健康への有害な影響を生ずるおそれがある。
- その他の物質については、長期間の暴露によって起こる毒性を指標として指針値が設定されており、1日平均濃度が指針値を超過する状態が継続すれば、健康への有害な影響を生ずるおそれがある。
- 化学物質の発散量が温湿度が上昇するほど増大することを考慮し、室内濃度が最も高くなると想定される夏期の条件とする。
- 家具等の収納物については、建築基準法で直接規制することは出来ないが、家具等の収納物について、用途に応じ標準的な量が設置されているものと想定する。
建築材料の規制について
- ホルムアルデヒドを発散するおそれのある建築材料のみを規制の対象として列挙する。
- 原則として規制対象となる建築材料であっても、次の理由により濃度超過のおそれがないときは、対象外とする。
- 規制対象となる建築材料の経過年数による発散量の低減
- 規制対象となる建築材料についての特殊なコーティング等の発散抑制のための特別な工夫
- 特別な空気調和設備の設置
- 規制対象となる建築材料の等級区分には、JIS, JASの製品規格を積極的に活用するほか、JIS, JASの製品規格に適合しないものについても等級区分を行うための認定手続を設ける。